できる!種族統一パの作り方
ゲコガシラ統一パ ぴすた
1.はじめに
私が初めて種族統一パを知ったのは,ニコニコ動画[1]に投稿されていたバトレボ実況プレイ動画[2]からである.当時はオンライン対戦におけるルールが設定されておらず,伝説ポケモンばかりのパーティと対戦せざるを得ない場合もあった.一方で,対戦への敷居が低く,誰もが好きなポケモンで好きなように対戦しやすい環境があった.
そのような環境で生まれた種族統一パに,私は強く惹かれた.ルール無用の環境で,タイプ相性や種族値の差に対し,知恵と工夫と愛情を持って勝利を目指すトレーナの姿勢に感動を覚えたからだ.
本論文では,この感動を伝えるべく,楽しく戦い続けることを目標とした,私なりの種族統一パの構築指針を提案する.
2.前提条件
本論文における前提条件を以下に示す.
①図鑑Noを統一したポケモン6匹で1パーティとする.
②ルールは①を除いて,5063シングル対戦とし,レーティングバトルOR・ASリーグにしたがう.
③対戦はPSS[3]を利用した擬似ランダム対戦,通称「野良戦」[4]によって行う.
④原則として連続した対戦を想定し,個体,技,持ち物の変更を伴わない.
これらの条件は,第五世代環境において種族統一パの主流であった「対戦相手毎に対策を施す試合を排除し,ランダムによる見えない対戦相手と戦う楽しさ」を現環境で再現する.また,この実践は大会等におけるスムーズな運営を支援する効果も期待できる.
3.ポケモンの選択
種族統一パにおけるポケモンの選択には,大別すると二種類の方法がある.一つ目が好きなポケモンを選択すること,二つ目が種族統一パに向いているポケモンを選択することである.
一つ目の「好きなポケモンを選択すること」は,種族統一パにおいて最もポピュラーな選択である.バトレボの頃より種族統一パを構築するのは,特定のポケモンへの愛情表現とみなされることが多い.また,好きなポケモンを使うことは,勝率をあげることが難しい種族統一パにおいて,モチベーションの維持,向上にも効果がある.しかしながら,極端に種族値が低い,攻撃範囲が狭い,トップメタとなるポケモンへの対抗手段に乏しいなど,そのポケモンが種族統一パに向いてない場合もある.
二つ目は「種族統一パに向いているポケモンを選択すること」である.種族統一パに向いているポケモンにはいくつかの条件がある.例えば,「すばやさが速い」「技の種類が豊富」「弱点が少ない」などである.
そもそも,種族統一パにおいては逆境に立たされるケースが多い.「常に弱点を突かれる」「有効な攻撃手段がない」といった課題にトレーナは苦悩する.そのため,勝てないとわかると種族統一パをやめてしまうトレーナもいる.これに対し,本論文では戦いの継続を目的として,種族統一パに向いているポケモンの選択を推奨する.そこで,種族統一パに向いているポケモンの具体的な選び方を以下に示す.
①すばやさ種族値が70以上であること
種族統一パでは一般的なルールに比べて,すばやさが重要なファクターとなる.対戦では常に弱点を狙われてしまい,行動以前に倒されてしまうケースが多い.そのため,より行動回数を稼ぐために,先手をとることが重要である.具体的には,すばやさ種族値が70以上あれば「こだわりスカーフ」の補助で多くのポケモンに先手をとることができる.基本的にすばやさは速いことが望ましいが,「トリックルーム」などの補助技や特性によって先手がとれる場合はこの限りではない.
②技が豊富でメジャーな四倍弱点をつけること
勝つためには技のタイプが重要である.一般的に交代受けができない種族統一パでは,一対一の戦いとなることが多いため,一種類のポケモンが四つの技で相手を倒さねばならない.そのようなときは扱えるタイプが多いほど弱点をつきやすく,先制技を扱えるならばさらに優位な立ち回りに期待ができる.
しかし,一つの種族が扱える技には限界があり,相性が悪くて倒せない相手の場合,勝負はその時点で決まってしまう.本稿では,対策としてメジャーな四倍弱点をつくことができるポケモンの選択を推奨する.例えば,ガブリアスやランドロスには「れいとうビーム」,ハッサムやナットレイには「だいもんじ」を使えるポケモンを選ぶ.これらの技によって,特定のポケモンによって詰むことがなくなり,一撃で倒してしまえば大きなアドバンテージも取ることができる.ただし,この課題の本質は詰まないことにあるため,対策として「カウンター」「じわれ」などの固定ダメージ技で有効打を確保しているならば,必須の要件ではない.また,OR・ASで威力が下がってしまったものの,「めざめるパワー」も有効な対策となりうる.
③弱点が少なく,四倍弱点をもたないこと
種族統一パは前述のとおり,先手をとって行動回数を稼ぎ,有効な技を利用することによってアドバンテージをとりつつ戦っていく.しかし,種族統一パは同じポケモンで同じタイプであるため,対戦相手からしてみればより簡単に弱点をつくことができる.したがって,勝つためにはポケモンの選択からシビアに考える必要がある.本稿では弱点が少なく,四倍弱点をもたないポケモンの選択を推奨する.具体的に言えば,先制技で弱点をつかれることがなく,弱点をもちものでカバーできる範囲であれば,運用しやすいポケモンであると考える.理想を言えば,弱点が一つしかないノーマルタイプのポケモンは非常に扱いやすいといえる.
4.パーティ構築
種族統一パの構築では,汎用性の高い主要メンバー三体を育成し,その後の運用テストで主要メンバーではカバーできない範囲を埋めていく手法が有効だと考えられる.本稿では,パーティ構築について具体例を交えつつ,以下のような構築方法を提案する.
①環境の調査を行う
汎用性の高い三体を育成するためには,現在の環境で,どのポケモンがどのように使われているかを知っておく必要がある.幸いなことに,レーティング環境で使われているポケモンのデータはPGL[5]にて公開されているため,誰でも簡単に調査が可能である.表1は,OR・ASシングルレートにおけるポケモンの使用順位と,最も利用率の高いもちものをまとめたものである.
表1.PGLにおける使用率順位ともちもの
順位 | ポケモン | もちもの |
---|---|---|
1 | ガブリアス | きあいのタスキ |
2 | ゲンガー | ゲンガナイト |
3 | ガルーラ | ガルーラナイト |
4 | ファイアロー | こだわりハチマキ |
5 | バシャーモ | バシャーモナイト |
6 | ギルガルド | じゃくてんほけん |
7 | リザードン | リザードナイトY |
8 | ウォッシュロトム | オボンのみ |
9 | クレセリア | ゴツゴツメット |
10 | ポリゴン2 | しんかのきせき |
11 | ランドロス | こだわりスカーフ |
12 | ナットレイ | たべのこし |
※2015年2月25日9:00のデータ
②メジャーなポケモンへの有効打を考える
種族統一パで勝つためには,少なくとも①で調査した使用率の高いポケモンに対する有効打を持っている必要がある.例えば,私の持つゲコガシラ統一における有効打は表2のようになる.
表2から,ゲコガシラはメジャーなポケモンに対する有効打に富んでいることがわかる.主要な三体を育成する際は,これらの技を採用することで負け筋を減らすことができる.
表2.メジャーなポケモンに対する有効打
順位 | ポケモン | 有効打 |
---|---|---|
1 | ガブリアス | れいとうビーム |
2 | ゲンガー | あくのはどう |
3 | ガルーラ | けたぐり |
4 | ファイアロー | がんせきふうじ |
5 | バシャーモ | ハイドロポンプ |
6 | ギルガルド | ねっとう |
7 | リザードン | いわなだれ |
8 | ウォッシュロトム | ? |
9 | クレセリア | あくのはどう |
10 | ポリゴン2 | どくどく |
11 | ランドロス | れいとうビーム |
12 | ナットレイ | ? |
③もちものを決める
②で考察した有効打をヒットさせる,あるいは確定一発で倒すことができるように何をもたせるべきかを考察する.例として,表3でゲコガシラの種族値を示す.種族値合計が405,未進化ポケモンゆえに全体的に種族値は低めで耐久値も心もとないが,すばやさが特出している.このことからもちものや技で耐久力を補ったり,すばやさを補助したりすることで行動回数を稼げるため,一定以上の活躍が期待できると考察する.
表3.ゲコガシラの種族値
H | A | B | C | D | S |
---|---|---|---|---|---|
54 | 63 | 52 | 83 | 56 | 97 |
表4は,表1のメジャーなポケモンの中で,ゲコガシラがすばやさで勝るポケモンを強調した表である.強調されたポケモンについては補助なしにも先手がとれるため,ここでは考察を割愛する.
表4から,主要なポケモンの多くがゲコガシラより先に行動できることがわかる.前述したとおり,ゲコガシラの耐久値は決して高くないため,先手をとられることは致命傷に繋がってしまう.しかし,すばやさの高いポケモンが必ずしも耐久に優れているわけではない.例えば,ガブリアスは「れいとうビーム」,メガリザードンYであれば「いわなだれ」で確定一発になり,メガゲンガーも先制して「あくのはどう」を打つことによって倒すことができる.つまり,ここで選択すべきもちものは,すばやさを補助する「こだわりスカーフ」であることがわかる.
表4.ゲコガシラが素早さで勝るポケモン
順位 | ポケモン | もちもの |
---|---|---|
1 | ガブリアス | きあいのタスキ |
2 | ゲンガー | ゲンガナイト |
3 | ガルーラ | ガルーラナイト |
4 | ファイアロー | こだわりハチマキ |
5 | バシャーモ | バシャーモナイト |
6 | ギルガルド | じゃくてんほけん |
7 | リザードン | リザードナイトY |
8 | ウォッシュロトム | オボンのみ |
9 | クレセリア | ゴツゴツメット |
10 | ポリゴン2 | しんかのきせき |
11 | ランドロス | こだわりスカーフ |
12 | ナットレイ | たべのこし |
この考察を踏まえて,私が育成した主要メンバー三体を表5に示す.
表5.ゲコガシラ統一の主要メンバー
ゲコガシラ:きあいのタスキ型 | |||
---|---|---|---|
特性 | へんげんじさい | 技構成 | |
性格 | せっかち | ハイドロポンプ | れいとうビーム |
努力値 | C252 S252 | がんせきふうじ | でんこうせっか |
ゲコガシラ:こだわりスカーフ型 | |||
---|---|---|---|
特性 | へんげんじさい | 技構成 | |
性格 | せっかち | ハイドロポンプ | いわなだれ |
努力値 | C252 S252 | れいとうビーム | あくのはどう |
ゲコガシラ:しんかのきせき型 | |||
---|---|---|---|
特性 | へんげんじさい | 技構成 | |
性格 | おだやか | まもる | れいとうビーム |
努力値 | H252 D252 | ちょうはつ | ねっとう |
④運用テスト
育成した主要な三体のメンバーで野良戦を行う.このときの試行回数は可能な限り多く,対戦を行うこととする.過去の調査[4]からわかるとおり,野良戦による種族統一パでのランダム対戦の成功率はまだまだ低い.しかし,机上のみで育成したパーティでは,実際の環境で通用しない.対戦の敷居は決して低くないが,試行回数をこなしてより練度の高いパーティの構築を目指して欲しい.
5.まとめ
本論文で紹介した構築手法は,種族統一パのほんの一部である.種族統一パはトレーナの数だけあり,これからはじめるトレーナには多くの種族統一パを参考にしてほしいと思う.最後に,本論文が種族統一パをはじめるきっかけになること,さらに種族統一パが発展することを祈念し.本論文を締めくくろうと思う.
参考文献
[1] “ニコニコ動画”, http://www.nicovideo.jp/
[2] “バトレボ実況プレイ動画”,ニコニコ大百科, https://dic.nicovideo.jp/a/バトレボ実況プレイ動画 ,2009
[3] “PSS”,http://www.pokemon.co.jp/ex/xy/com/01.html
[4]“種族統一パを使用した対戦方法の考察”,C86,https://sergeant118.booth.pm/items/37829 ,2014
[5]“PGL”,http://www.pokemon-gl.com/