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ShuzokuTouitsuJournal

種族統一論文とりまとめ用

シャドースチールでシャドースチール

マーシャドー統一 かざぶき

1.はじめに

「ポケットモンスター サン・ムーン」において,2017年8月25日~28日の期間でインターネット大会「シャドースチール」が開催された.この大会はパーティ内のポケモン・道具の重複が可能というルールで注目された.大会名になっている「シャドースチール」は,直前で解禁されたばかりの幻のポケモンであるマーシャドーの専用技である.私はマーシャドー統一を組んでこの大会に参加することを決めた.

2.マーシャドーについて

マーシャドーは2017年夏に公開された「劇場版ポケットモンスター キミにきめた!」の上映中に配信された幻のポケモンである.

まず,種族値を見てみよう.

HP 攻撃 防御 特攻 特防 素早さ
90 125 80 90 90 125

攻撃と素早さに秀でた,高速アタッカー向きの種族値である.幻のポケモンであるためか,合計種族値は600であり,耐久面や特攻に関しても決して低くない.優秀な種族値と言っていいが,マーシャドーが優秀な点は他にある.

それはタイプである.マーシャドーは固有である,かくとう・ゴーストの複合タイプを持つ.この2つの組み合わせは非常に強力である.なぜならば,かくとうとゴーストの両方のタイプの攻撃技を半減することができるポケモンが存在しないためだ.タイプ一致となる2つの攻撃技を覚えさせれば,全てのポケモンに対して有効打を持つことになる.

マーシャドーの弱点はひこう,ゴースト,エスパー,フェアリーの4つ.このうち,ゴーストとエスパーについては,ゴースト技で弱点を突くことができるため,素早さの高いマーシャドーにとっては,大きな脅威とはならない.ひこうとフェアリーに対しては対策を練っておく必要があるだろう.

特性は「テクニシャン」.これを生かせる技として「かげうち」がある.他には「はっけい」や「がんせきふうじ」などが挙げられる.アタッカー気質のマーシャドーにとって,非常に有用な特性である.

3.シャドースチールについて

マーシャドーの専用技として大会名にもなっている「シャドースチール」がある.威力は90で命中は100.ゴーストタイプの物理技は「シャドークロー」や「ゴーストダイブ」といった具合であまり恵まれていないため,ありがたい.何よりこの技の優れている点は追加効果にある.それは相手の能力上昇を奪い取るというもの.相手が「つるぎのまい」を使用してこうげきを2段階上昇させていれば,相手にダメージを与える前に相手のこうげきを元に戻し,自分のこうげきが2段階上がる.下がっている能力は奪い取らず,そのままである.基本的には相手に能力変化の技の使用を抑制するものであり,この効果が実際に発揮する場面はあまり多くない.しかし,相手のポケモンの特性が「かそく」や「ビーストブースト」ならば,奪い取ることができる.また,自分から「いばる」を使用して,次のターンに「シャドースチール」で奪い取るという戦術を取ることもできる.

このように,マーシャドーは強力なポケモンである.このマーシャドーで統一パ組むということは6匹分の構成を考える必要がある.強力なポケモンといっても,弱点はある.そこをパーティ内で対策しなければならない.本来であれば,苦手なポケモンからは交換して有利なポケモンを繰り出すのがポケモンバトルの基本だが,種族統一パはそうもいかない.技,持ち物,性格,努力値の振り方.これらを工夫して対抗手段をひねり出す.それが,種族統一パの楽しみの1つと言っていいだろう.

タイプも技も特性も優秀なマーシャドー.これをどう生かすか,ポケモントレーナーとして非常に楽しみであった.

4.マーシャドー統一を組む前に

(1) 技の考察

まず最初に行ったのが,覚える技を調べることである.攻撃技に関しては,ゴーストとかくとうの2つのタイプで一貫するが,弱点を突けるならば突いた方が良い.以下に有用な技を書き出す.

・物理技

アクロバット いわなだれ インファイト
おいうち おんがえし カウンター
かげうち かみなりパンチ がむしゃら
からげんき かわらわり がんせきふうじ
ギガインパクト しっぺがえし シャドークロー
シャドースチール シャドーパンチ ストーンエッジ
どくづき ドレインパンチ どろぼう
なげつける はっけい ふいうち
フェイント ほのおのパンチ まわしげり
れいとうパンチ ローキック  

・特殊技

エコーボイス きあいだま くさむすび
シャドーボール めざめるパワー りんしょう

・変化技

いばる おにび かげぶんしん
どくどく なりきり ねごと
ねむる ビルドアップ まねっこ
まもる みがわり めいそう

特殊技については少ないが,物理技は非常に多い.技の選択肢が多いということは,そのまま強さにつながる.1種類のポケモンで複数の構成を考える種族統一パにおいては,なおさらである.

覚える技からどういった構成が可能か.また,どういった構成が必要かを考える.

アタッカーとして必要な技はだいたい覚えるため,種族値通りにアタッカーとして運用するのが妥当だろう.「シャドースチール」と「インファイト」で安定して相手を攻撃し,苦手なフェアリータイプには「どくづき」,飛行タイプには岩技を打つ.

先制技は優先度の高い「フェイント」,タイプ一致の「かげうち」,無効タイプの存在しない「ふいうち」の3つがあり,用途に合わせて選択したい.

「カウンター」と「がむしゃら」を覚えるため,「きあいのタスキ」を持たせて苦手なポケモンを突破する構成も考えられる.

「アクロバット」は「テクニシャン」で強化されるうえに「なげつける」との相性も良い.だが,打つ相手があまりいないだろうか.

対戦で使われる頻度の高いガブリアスやボーマンダ,霊獣ランドロスなどに有効であるのが「れいとうパンチ」だ.「かみなりパンチ」と「ほのおのパンチ」も一部の相手に刺さる.特殊技は種類が少ない.特攻の種族値は攻撃と比べると高くないうえ,威力が控えめな「シャドーボール」と命中が不安な「きあいだま」では使い勝手があまりよくない.だが,唯一覚える草タイプの技である「くさむすび」の存在は大きい.

変化技の中で注目すべきは「おにび」だ.「ビルドアップ」や「ドレインパンチ」と合わせて,耐久型を構成することができるだろう.

「なりきり」と「まねっこ」は相手に左右される技であり安定はしないが,ロマンの溢れる技であり,使ってみたいという感情に駆られる.

(2) 持ち物について

技について調べたら,次は持ち物との組み合わせを考える.なお,この大会においてはパーティ内の持ち物の重複が可能であるが,個人で開かれているほとんどの種族統一大会において持ち物の重複は認められないため,今回も持ち物の重複はしないことにした.

種族統一において重要な持ち物は「きあいのタスキ」と「こだわりスカーフ」であろう.

「きあいのタスキ」については前述したように「がむしゃら」や「カウンター」と相性が良い.「がんせきふうじ」などの素早さを下げる技も有効であり,「インファイト」の能力ダウンを気にせずに済む利点もある.

「こだわりスカーフ」については2つの使い方がある.1つ目は自分より素早いポケモンに対して先制して倒す使い方.もう1つは相手の「こだわりスカーフ」持ちのポケモンに対する対策としての使い方である.まず,自身以上の素早さを持つポケモンを調べた.

デオキシスS/A/N テッカニン フェローチェ
マルマイン メガフーディン メガプテラ
メガスピアー メガジュカイン アギルダー
メガライボルト メガミミロップ サトシゲッコウガ
メガゲンガー サンダース プテラ
クロバット カプ・コケコ メロエッタS
シェイミS ファイアロー オオスバメ
マニューラ ダークライ  

これらのポケモンの中で,マーシャドーにとって脅威となるのは以下の11種類である.

デオキシスS/A/N テッカニン メガフーディン
メガプテラ メガゲンガー プテラ
クロバット カプ・コケコ シェイミS
ファイアロー オオスバメ  

これらのうちデオキシス,メガフーディン,メガゲンガーについてはゴースト技で先制すれば倒すことができる.テッカニン,プテラ,クロバット,シェイミS,ファイアロー,オオスバメは岩技や氷技で弱点を突きたい.カプ・コケコには「どくづき」が有効だが,1撃で倒すことはできないため,あまり必要性を感じない.

その他,メガミミロップは特性「きもったま」によって「ねこだまし」を無効化できないため,戦いづらい.ダークライは同速であるため,先制されて「さいみんじゅつ」をされると厄介である.メロエッタSについては,そもそもフォルムチェンジに必要な「いにしえのうた」を無効化するため問題にならない.

もう1つの使い方である,相手の「こだわりスカーフ」対策というのも考える.これは同時に相手に「りゅうのまい」などをされた際のストッパー役も兼ねる.最速のマーシャドーの素早さ数値は194である.素早さ種族値が66以下のポケモンは「こだわりスカーフ」を持ってもマーシャドーより遅い.素早さ種族値が67以上で,使用率が高く,「こだわりスカーフ」や素早さを上昇させる技の所持率が高いポケモンに絞って対策をする.私が主に想定したポケモンはガブリアス,カプ・テテフ,ギャラドス,ボーマンダ,ランドロス霊獣である.これらのポケモンを「こだわりスカーフ」持ちの個体で対策する必要がある.

その他に,4匹分の持ち物を考える必要がある.種族統一において持たせることの多い持ち物として「半減実」がある.しかし,今回は必要性を感じなかった.とにかく優秀なマーシャドーは「きあいのタスキ」と「こだわりスカーフ」の個体で苦手なポケモンの相手は一通りできるのではないかと考えたからだ.また,種族統一大会とは異なり,今回はさまざまなパーティと戦う必要があるうえ,大会途中のパーティ変更が不可能である.ピンポイント対策気味になる「半減実」は活躍の機会に恵まれない場合があるため,汎用性の高いものを求めた.まず「とつげきチョッキ」がある.「シャドーボール」や「ムーンフォース」の対策にもなる.次に「たべのこし」だ.「おにび」を生かした耐久型は必要だろう.「ゴツゴツメット」も考えたが,マーシャドーはゴーストタイプであるため発動機会がやや少ない.回復手段が「ドレインパンチ」か「ねむる」しかないのも不安であり,「たべのこし」の方が有用だろう.忘れてはいけないのが「マーシャドーZ」だ.せっかくの専用のZ技である.威力が高く,演出も面白い.相手の「トリック」や「はたきおとす」の対策にもなる.できれば使っていきたい.

パーティ内に1体は用意しようと考えていた特殊型のマーシャドー.その個体に何を持たせるかというのは最後まで悩んだ.

5.パーティ紹介

私は「おうかん」を使用したくないため,個体値については厳選した際のものをそのまま利用していることに注意してほしい.

性格 ようき 持ち物 きあいのタスキ
個体値 25-29-31-×-31-31 努力値 0-252-4-0-0-252
技構成  
かげうち がむしゃら
インファイト シャドースチール

特に詳しい説明は必要ないだろう.「インファイト」と「シャドースチール」で安定して攻撃することができる.素早さの負けている相手に対しても「かげうち」込みで2回攻撃することができる.

性格 いじっぱり 持ち物 こだわりスカーフ
個体値 24-31-26-×-31-31 努力値 4-252-0-0-0-252
技構成  
いわなだれ インファイト
れいとうパンチ シャドースチール

性格はいじっぱりでも「こだわりスカーフ」持ちのカプ・テテフやガブリアスには先制されない.威力を重視して格闘技は「インファイト」.先制することと相性の良い「いわなだれ」,カプ・テテフを1撃で倒す「シャドースチール」,シェイミSやボーマンダなどに有効な「れいとうパンチ」.

性格 ようき 持ち物 マーシャドーZ
個体値 31-31-30-×-23-31 努力値 0-252-0-0-4-252
技構成  
いばる はっけい
みがわり シャドースチール

「いばる」と「シャドースチール」の相性の良さを生かした構成.さらに「みがわり」を入れ「いばみが」戦術を取れるようにした.格闘技は「みがわり」と相性の良い「まひ」の追加効果を持つ「はっけい」を選択.持ち物は特に必要なものがなかったため「マーシャドーZ」にした.

性格 わんぱく 持ち物 たべのこし
個体値 27-31-31-×-29-31 努力値 248-0-282-0-0-8
技構成  
おにび ビルドアップ
ドレインパンチ シャドースチール

対物理ポケモンに特化した構成.HPの個体値が31でないのが気になる.「おにび」と「ビルドアップ」で被ダメージを減らし,「ドレインパンチ」で攻撃兼回復.相手が「つるぎのまい」や「てっぺき」で対抗しても「シャドースチール」で奪い取ることができる.

性格 しんちょう 持ち物 とつげきチョッキ
個体値 31-31-31-×-31-20 努力値 248-0-0-0-220-40
技構成  
どくづき がんせきふうじ
ドレインパンチ シャドースチール

対特殊アタッカー.努力値調整は覚えていない.カプ・コケコやカプ・レヒレと戦闘することが多かった.種族統一では後出しで攻撃を受けることが難しいが,この個体は後出しすることも不可能ではない.

性格 おくびょう 持ち物 ふうせん
個体値 26-×-31-31-10-31 努力値 116-0-4-252-0-136
技構成  
めいそう きあいだま
くさむすび シャドーボール

特殊型.対地面タイプを想定してふうせん持ち.弱点ではないが「じしん」や「どくびし」の一貫性を切れるのは強いと思う.

以上の6匹でマーシャドー統一が完成した.

「まねっこ」や「なりきり」を入れることはできなかった.だが,パーティ内に様々な技を入れることはできた.種族統一はどうしても攻め方が単調になりがちであるため,できる限り技の被りを減らしたいと私は考えている.また,今回は大会中のパーティ変更ができないため,より広いパーティに対応できるよう多くの選択肢を持たせたかったという思いもある.「シャドースチール」については専用技であり,問答無用で強力なため,被りは仕方がない.

6.大会開始~大会を終えて

8月25日,大会が始まった.フレンド戦などでの試運転は一切行っておらず,努力値振りは全てポケリゾートや道具で行ったため,戦闘シーンを見ることすら初めてだった.詳しい試合内容についてはここでは省略する.興味がある方はniconicoに対戦動画を投稿してあるため,そちらを見ていただきたい.

実際に戦ってみると,対策がうまくハマることもあれば対策が甘かったなと後悔することもある.例えば,カプ・テテフは想定通り「きあいのタスキ」か「こだわりスカーフ」を持った個体で倒すことができ,それほど苦戦せずに済んだ.

一方で対策が甘かった,想定外のポケモンとして,まずミミッキュが挙げられる.ミミッキュはサン・ムーン環境においてもっとも強力なポケモンと言っても過言ではなく,対策は必須であったのだが,なぜか忘れていた.「おにび」を持たせた対物理アタッカーに特化した構成のマーシャドーがミミッキュに素早さで負けていることが多く,頭を抱えた.せめて「いじっぱり」のミミッキュには先制できる調整をするべきであった.マギアナも非常に厳しいポケモンとして立ちふさがった.「トリックルーム」をされると成すすべがなかった.今まで戦ったことのないポケモンであったため忘れていた.その他,テッカグヤやギルガルド,意外なところではジガルデにも苦戦した.また,当然ながらマーシャドーも厳しい.マーシャドー統一と戦うことはなかったが,遭遇回数は非常に多く,その度に同速対決でお祈りすることになった.

特殊型の個体のみ出番が少なかったが,ラグラージやヌオーと遭遇する可能性を考慮すると,入れざるを得なかった.

物理型の5体については,どの個体も非常に活躍をした.改善点を挙げるならば,「かげうち」をもう1,2体に覚えさせた方がよかったかもしれない.

相手の知識不足に助けられた試合が複数あった.「シャドースチール」の相手の能力上昇を奪い取るという追加効果を知らずに「つるぎのまい」をするミミッキュや「たくわえる」をするドヒドイデと遭遇したのだ.あまりスッキリとしない勝ち方ではあるが,登場したばかりで戦ったことのある人が少ないというのもマーシャドーの強さの1つということだ.

マーシャドーが強力なポケモンであることは戦う前からわかっていたが,自分の予想を超える強さであった.大会開始から5連勝し,その後もたまに負けつつではあるが,レートをグングン上げていった.気が付けば1600を突破し,1700も突破した.最高レートは33試合目を終了した時点で1730だ.その後は負けることが多くなり,最終的には30勝15敗で1670という結果になった.強力なマーシャドーといっても,種族統一パでこれほど勝てるとは思わなかった.

7.終わりに

インターネット大会「シャドースチール」は大変面白かった.種族統一パでランダムバトルをする機会は今はほとんどなく,この企画をしてくれたことには心から感謝をする.できることならば,また同じルールで開催してほしい.その時にはまたマーシャドーを使いたいが,他のポケモンも使ってみたいと思う.