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ShuzokuTouitsuJournal

種族統一論文とりまとめ用

ロズレイド統一の基本的な運用思想について

ロズレイド統一パ モモシロ

1.はじめに

種族統一戦とは,世に存在する809種族(執筆時点では807種)が,各々の持てる能力を出し尽くして戦う総力戦である.正攻法も,火力押しも,奇襲も,泥臭い持久戦も,対戦ルールに反しない限り全てその種族の「戦い方」である.時に無慈悲に感じられる性能差は,それが大きければ大きいほど覆してやろうという闘争心が燃え上がるものである.逆に自分が有利であるほど油断しやすく,思わぬ反撃に遭い敗北を喫することも十分に有り得る.種族統一戦は俗に言う縛りプレイといった遊びの類ではない.「戦」であると筆者は断言する.種族統一プレイヤー各々が「戦友」となる種族を選択し,日々戦いに身を投じている.筆者の「戦友」は第5世代から一貫してロズレイドである.

ポケットモンスターシリーズも第7世代を迎え対戦環境が大きく変わってきた今,ロズレイド統一の運用思想および戦歴を顧みるとともに,今後への課題や対策を考察する.

2.ロズレイド統一運用の基軸

対戦の前に相手のタイプ,特性や種族値を把握しておくことが重要なのは勿論であるが,ロズレイド統一を使う際に下記の4項目を特に重要視している.

  1. 「ひかりのかべ」の警戒

  2. 4倍弱点の攻撃

  3. 耐久の上昇

  4. 物理攻撃の奇襲

この4項目をロズレイド統一運用時の基軸に据え,攻守の戦略を立てることになる.以降,この4項目について具体的に述べていく.参考として,ロズレイドの種族値を下記に示す.

表 1.ロズレイドの種族値

H A B C D S
60 70 65 125 105 90

(1) 「ひかりのかべ」の警戒

「ひかりのかべ」は特殊攻撃のダメージを半減するために用いられる変化技であり,特殊攻撃主体のロズレイドにとって最も警戒すべき技の一つである.序盤で「ひかりのかべ」を使われてしまえば,戦況は一気にロズレイド側が不利となる.対戦相手の種族が判明している場合は,その種族が「ひかりのかべ」を習得可能かどうかを第一に確認すべきである.「ひかりのかべ」を使う種族に勝てるかどうかは,それを使われる前に戦闘の主導権を握る決定打を打てるかどうかにかかっている.

(2) 4倍弱点の攻撃

ロズレイドの隠れ特性「テクニシャン」と「めざめるパワー」の組み合わせは,ノーマルタイプとフェアリータイプ以外の特殊攻撃技を威力90で使うことができる点で有名である.フェアリータイプについても,威力は80であるが「マジカルシャイン」を習得可能なので,「めざめるパワー」と合わせて事実上全4倍弱点を威力80〜90以上で突くことができる.使い所が良ければ相手の3タテを狙うことも可能であり,この長所は種族統一戦においても積極的に利用すべきである.

しかし,4倍弱点を持つ種族は当然ながら十分な対策を取っていることが予想されるため,早まって攻撃すると思わぬ反撃を受ける場合もあるので要注意である.こちらとしては,相手が常に対策していることを前提として動く必要がある.

(3) 耐久の上昇

いくら特攻種族値が高いロズレイドとはいえ,相手が特防に秀でていれば例え弱点を突いたとしても1撃で落とすことは困難であり,特攻に特化した型でも押し負けてしまうことが多い.特防高耐久の相手に対しては力攻めではなく,「どくどく」や「やどりぎのたね」等で徐々に,だが確実にダメージを与え続ける戦法に切り替えなければならない.火力を主体とした攻めではないので,相手のHPを削るためにはこちらも耐久型で時間を稼ぐ必要がある.とは言え,ロズレイドの耐久は高いものではないので,耐久を補う方法を模索しなければならない.その方法はいくつか考えられるが,ここでは以下のa)b)に大別する.

a) Z変化技による追加効果

悲しいことに,ロズレイドは自分の能力を上昇させる技(いわゆる積み技)をほとんど覚えない.攻撃面を上昇させる変化技は「つるぎのまい」(攻撃2ランク上昇)や「せいちょう」(攻撃と特攻1ランク上昇)があるが,自分の守備力を上昇させる変化技は覚えられない.

このように,通常の習得技による能力上昇は少し寂しいものがあるが,Z変化技による能力上昇は比較的豊富である.表 2では,Z技として使用した際に自分の能力を上昇させる効果が付加される変化技を整理した.(命中率と回避率の上昇になる技は除く)

表2.ロズレイドのZ変化技の効果

攻撃上昇  
とぎすます(+1) 次ターンの技が必ず急所に当たる
防御上昇  
ベノムトラップ(+1) 相手が毒状態の時に攻撃,特攻,素早さを1ランクずつ下げる
グラスフィールド(+1) 場の状態を「グラスフィールド」にする
どくどく(+1) 相手を猛毒状態にする
まきびし(+1) 相手が交代する度にダメージを与える
どくびし(+1) 相手が交代する度に毒状態にする
特攻上昇  
こころのめ(+1) 次のターンの技が必ず当たる
せいちょう(+1) 攻撃と特攻を1ランクずつ上げる
てんしのキッス(+1) 相手を混乱状態にする(XD限定)
特防上昇  
ないしょばなし(+1) 相手の特攻を1ランク下げる
しびれごな(+1) 相手を麻痺状態にする
ねをはる(+1) 交代不可になるが毎ターン最大HPの1/16を回復
みずあそび(+1) 炎技の威力が1/3になる
ゆうわく(+2) 自分と異なる性別の相手の特攻を2ランク下げる(HG限定)
素早さ上昇  
にほんばれ(+1) 天候を晴れにする
あまごい(+1) 天候を雨にする
ねむりごな(+1) 相手を眠り状態にする
くさぶえ(+1) 相手を眠り状態にする
なやみのタネ(+1) 相手を不眠にする

※( )内の数字は能力の上昇ランクを示している

特筆すべきは特防が2ランク上昇するZ「ゆうわく」であろう.ただし,「ゆうわく」を習得できるのは第4世代のハートゴールド・ソウルシルバーのみであり孵化作業の難易度は高い.それでも,ロズレイドが好きで根気のあるトレーナーは何としても押さえておきたいところである.

b) 相対的な耐久上昇

ロズレイドが相対的に自分の耐久を上げる,すなわち被ダメージを軽減するためには下記の方法が考えられる.

変化技によるダメージ軽減

相手のステータスを下げる変化技は,特攻を下げる「ないしょばなし」と「ゆうわく」しかないもののその効果は大きい.前項でも述べたようにZ技として使う場合は,自分の特防ランク上昇と相手の特攻ランク降下を同時に発動させられる.

Z「ゆうわく」については万一自分と相手の性別が同じであっても,特防2ランク上昇の効果は得られるのだから使って損はない.

「あまごい」「みずあそび」の使用

炎タイプの種族を相手にした場合に限定されるが,炎技によるダメージを軽減するために「あまごい」や「みずあそび」がよく用いられる.「あまごい」による降雨状態は炎技のダメージを1/2に低減し,「みずあそび」は炎技の威力を1/3に低減する.

炎技ダメージを抑えられる環境下で,与ダメージは少ないが「どくどく」,「やどりぎのタネ」等で相手のHPを削りつつ「こうごうせい」(ただし,降雨時は回復量が減少する)で時間を稼ぐことも可能である.この戦法を採る場合は耐久寄りのロズレイドを選ぶことになると思われるが,控えのアタッカーに交換する際の被ダメージを抑えることもできる.

なお,炎タイプが弱点となるポケモンのうち「あまごい」と「みずあそび」を両立可能なのは,アメモースとスボミー,ロゼリア,ロズレイドのみであるからこれを使わない手はない.

(4) 物理攻撃の奇襲

基本的に耐久型の種族に対しては(3)耐久の上昇で述べたようにこちらも持久戦に持ち込めば良いだろう.しかし,相手が特殊耐久に秀でている,かつタイプ一致でロズレイドの弱点を突いてくるような場合は話が別である.そのような場合は特殊攻めでも耐久でもなく物理攻撃主体で攻める方針に切り替える決断が必要である.

ロズレイドといえば特攻の高さが有名である一方で攻撃は低めであるというのが通説である.普通パにロズレイドを入れているプレイヤーで,わざわざ物理型ロズレイドを採用している人はほとんどいないであろう.しかし,種族統一戦においては当然ながら普通パの対戦とは全く異なる視点で採用すべき型を選ばなければならない.例えば,(1)「ひかりのかべ」の警戒で述べたように相手が特殊技を封じる策に出たとしても,初めから物理技で攻める想定であれば,我々が1ターン無償で行動できることに他ならない.

こちらが攻撃と特攻の種族値の差が大きい種族であるほど,相手はその得意な方を警戒して潰すためにターンを消費する可能性が高く,その裏を突けば相手の思惑を打ち砕けるのである.ただし,あまりにも物理攻撃を多用しすぎると,何度か対戦を繰り返している相手には警戒され肩透かしを食う可能性があるので注意が必要である.

3.ロズレイド統一の戦い方

前章で列挙したロズレイド統一の運用基軸の有効性や課題について,過去の実戦等を交え考察する.なお,戦闘事例は過去に対戦した種族統一パ同士の対戦や,公式のインターネット大会である「シャドースチール大会」および「ウルトラスーパーハイパーチャレンジ」(以下,USHCとする)における普通パとの対戦を対象としている.また,実際に対戦してはいないが構想中の策戦も示す.

3.1 「ひかりのかべ」の警戒

ここでは「ひかりのかべ」を使われることで不利な状況に陥った実例を複数示す.現在のところ,「ひかりのかべ」を使用された時点で勝ち星を上げることができた対戦はほとんどないので,最も克服すべき課題の一つであると言える.

a) VS ニンフィア統一 [実戦]

 勝敗:●

表 3.ニンフィアの種族値

H A B C D S
95 65 65 110 130 60

タイプ相性ではロズレイドが有利であるため,こちらは最初に「どくびし」をセットし後続で「ベノムショック」を連射する戦法を採った.速攻で勝敗を決することを企図したが,それが相手に「ひかりのかべ」を貼る余裕を与えてしまったのである.その後,慌てて「ヘドロばくだん」を放つ等したが「じゃくてんほけん」を発動され「サイコショック」の連打を受け敗北した.

ニンフィアは,最高威力がかなり高い値になる攻撃技をいくつか習得するが,威力を上げるためにそれなりの条件を満たす必要があるものが多い.例えば,「きりふだ」は最大威力200にするために残りPPを1にする必要があり,「アシストパワー」で高威力を狙うには何らかの能力上昇が必要である.このように,発動までに一手間かかるため,タイプ不利であればまずは壁を貼る等の守りを固めることに徹すると予想できたはずである.現にニンフィアは能力上昇技や壁系の技を豊富に習得可能である.完全に相手の「壁」の使用を見落とした不注意が招いた敗北である.

b) VS チラチーノ統一 [実戦]

 勝敗:○×3 ●×2

表 4.チラチーノの種族値

H A B C D S
75 95 60 65 60 115

第7世代では,フレンド対戦と公式大会(シャドースチール大会とUSHC)を合わせて5回チラチーノ統一と対戦する機会があり,そのうち2回は「ひかりのかべ」を使用され敗北している.ロズレイドと同様に,チラチーノは種族値だけ見れば耐久が高いとは言えない種族である.したがって,こちらの高火力技を封じるために「ひかりのかべ」を初手で使用してきた.

さらに別の対戦では,以前に「ひかりのかべ」を使われた時の教訓を受けて「こだわりスカーフ」+「リーフストーム」型で一気に落とす戦法を採ったものの,「とつげきチョッキ」で受けられた後に結局「ひかりのかべ」を決められてしまった.ロズレイドはチラチーノに対して素早さで負けるので「こだわりスカーフ」型を前面に強襲を試みたが相手に読まれていた.

<総評>

とにかく「ひかりのかべ」はロズレイド統一にとって目の上のこぶと言うに相応しい技である.ロズレイドに相性で勝っている相手は保険のために余裕を持って,ロズレイドを苦手とする相手は是が非でも「ひかりのかべ」を使ってくる.

そのような堅固に守ってくる相手に対して強引に特攻で攻めてもジリ貧になるだけであり,時に得意な特攻を放棄する判断も必要になる.

3.2 4倍弱点の攻撃

a) VS リザードン [実戦]

 勝敗:○×3 ●×2(ただしリザードン単体のみ)

表 5.リザードンの種族値

  H A B C D S
通常 78 84 78 109 85 100
メガX 78 130 111 130 85 100
メガY 78 104 78 159 115 100

リザードン統一と対戦したことはないので,シャドースチール大会およびUSHCで複数回対戦したリザードン単体について述べる.相手の手持ちにリザードンが含まれている場合は概ね初手から選出された.特性の「ひでり」と突出した特攻種族値で草タイプを圧倒する狙いのためか,出てくるリザードンのほとんどはメガリザードンYに進化する型であった.ただし,当然ながらメガシンカする型は「メガストーン」以外を持つことはできないので,初手に「こだわりスカーフ」+「めざめるパワー(岩)」型のロズレイドを出し,相手の4倍弱点を先に突くことでほぼ確実に撃墜することができた.むしろメガシンカしない通常リザードンよりも対処しやすかった.

しかし,メガリザードンXになる場合はタイプが炎とドラゴンになるため4倍弱点を突けなくなる.いくら高火力の「めざめるパワー」を撃てるロズレイドであっても,タイプ不一致で2倍弱点を突いて相手を一撃で落とすことはかなり難しい.また,相手がメガシンカしないリザードンで「こだわりスカーフ」を持っている場合は確実に先制されて倒される.仮にこちらがタイプ半減の実やきあいのタスキを持っていても,大ダメージは免れない.現にロズレイドが負けたのは,「こだわりスカーフ」+「めざめるパワー(岩)」型を連れていなかったシャドースチール大会の一戦と,通常リザードンが選出されたUSHCの一戦である.

b) VS ジャラランガ統一 [実戦]

 勝敗:○

表 6.ジャラランガの種族値

H A B C D S
75 110 125 100 105 85

USHCで遭遇したジャラランガ統一との対戦になる.ウルトラサン・ウルトラムーンで強力な専用Z技「ブレイジングソウルビート」を獲得したことにより,ジャラランガを使うプレイヤーが増加していると睨み,USHCには対ジャラランガを想定した型を入れていた.具体的な調整は下記の通りである.

表 7.対ジャラランガ型のロズレイド

性格 おくびょう  
特性 テクニシャン  
持ち物 フェアリーZ  
努力値 H:70 / C:220 / S:220  
マジカルシャイン めざめるパワー(氷)
ねむりごな せいちょう  

威力185の火力とHP以外の全ステータスを1ランクずつ上昇させるという狂気の追加効果が発動する「ブレイジングソウルビート」を決められてしまうとロズレイド統一に勝機はなくなる.したがって,この専用Z技を使って来ると考えられるジャラランガを狩ることが最優先事項となる.

幸いなことに,ジャラランガの素早さ種族値は85でありロズレイドより僅かに遅い.さらに,主要攻撃目標である「ブレイジングソウルビート」型ジャラランガは当然ながら「ジャラランガZ」以外の道具を持つことができない.このロズレイドの素早さ努力値220というのは,「ブレイジングソウルビート」最速ジャラランガの素早さを1上回るように調整したものであり,残りを特攻に割り振ることで確実に狩る.仮に想定が外れ「ブレイジングソウルビート」を使わずに攻撃特化「れいとうパンチ」または「ほのおのパンチ」で突っ込んできた場合でも,HPの努力値が70あれば1発は耐える.

結果として,こちらの狙い通り初手に出てきた「ジャラランガZ」型を倒し,後続のジャラランガ2匹も「マジカルシャイン」で押し切ることができた.

c) VSフェローチェ統一[実戦]

 勝敗:●

表 8.フェローチェの種族値

H A B C D S
71 137 37 137 37 151

逆に4倍弱点を突くタイミングを誤ったことで敗北を喫した例として対フェローチェ戦を示す.

「こだわりスカーフ」+「めざめるパワー(飛行)」型を温存しておこうとしたことが災いし,序盤に他のロズレイドが倒されたことで相手フェローチェの「ビーストブースト」が発動し素早さが上昇した.このため,後続の「こだわりスカーフ」型でも先手を取ることができずに敗北した.後に模擬戦で確認したところ,対戦相手のフェローチェには「こだわりスカーフ」や「きあいのタスキ」持ちの個体がいなかった.つまり,最初から「めざめるパワー(飛行)」を先手で撃てるロズレイドを出しておけば勝てる可能性があったのである.4倍弱点対策を警戒すべき場合と思い切って押すべき場合を見誤った対戦である.

<総評>

最初から弱点を攻めるのか場を整えてから攻めるのか,4倍弱点を持つ種族との対戦ではこの判断が重要となる.筆者の経験だが,最初から4倍弱点を攻めることをためらった場合は逆襲されることが多いと感じている.一般にロズレイドの「めざめるパワー」の「主流」とされている炎,氷,岩(最近では地面も含まれるらしい)タイプ以外で4倍弱点が突けるのであれば,積極的に攻め込んだほうが良いかもしれない(勿論,ロズレイドの「めざめるパワー」は全タイプが「主流」であると筆者は考えている).「きあいのタスキ」や「こだわりスカーフ」等を持った型が選出されることがないと確実に判断できる場合を狙って上手く当てていくことが必要だろう.

3.3 耐久の上昇

a) VS 炎タイプの種族 [実戦・想定]

初めに,通常の炎技ダメージを1とした場合に対する「あまごい」および「みずあそび」によるダメージ軽減割合を示す(表 9).

それぞれの技を単体で使うだけでも相当な効果を期待できるが,両方を合わせ技で使えば炎技に対しては磐石な態勢で戦闘を進められることだろう.「あまごい」か「みずあそび」のいずれか一方のみを使う場合は,より炎技のダメージを抑えられる「みずあそび」を優先的に使うほうが良いであろう.この状態で炎技を受けて「じゃくてんほけん」を発動させてからの「めざめるパワー(岩)」や「めざめるパワー(地)」による反撃はかなり強力である.その実例を2つ示す.

表 9.各条件下で炎技を受けた場合のダメージ率

使用する技 炎技ダメージ率
なし ×1.0
あまごい ×0.5
みずあそび ×0.35
あまごい + みずあそび ×0.17

VS バシャーモ [実戦]

勝敗:○×3 ●×2(ただしバシャーモ単体のみ)

表 10.バシャーモの種族値

  H A B C D S
通常 80 120 70 110 70 80
メガ 80 160 80 130 80 100

バシャーモはシャドースチール大会およびUSHCの普通パとして複数回対戦した.初手で「まもる」を使う「かそく」バシャーモがあまりにも流行って辟易していた時に,それならその戦法を逆手に取ってやろうと考えて育成した型である.

表 11.対バシャーモ型のロズレイド

性格 ずぶとい  
特性 テクニシャン  
持ち物 じゃくてんほけん  
努力値 H:188 / B:252 / C:70  
みずあそび めざめるパワー(地)
こうごうせい じんつうりき  

相手が「まもる」で1ターン消費することを見込み後手で「みずあそび」を使う.炎技を受けて「じゃくてんほけん」を発動させる算段なので,素早さには努力値を振っていない.ただし,初手から「フレアドライブ」で突っ込まれると目論みは崩される.

VS コータス統一 [実戦]

 勝敗:○

表 12.コータスの種族値

H A B C D S
70 85 140 85 70 20

ロズレイドより素早さが遅い炎タイプの種族統一との対戦では,ほぼ確実に「みずあそび」「あまごい」を先手で使え,その後の戦闘を有利に進めることができる.対コータス統一戦では前述の対バシャーモ型を選出し,「みずあそび」の使用から「じゃくてんほけん」発動までを成功させ,「めざめるパワー(地)」で全抜き態勢が整ったところで相手が降参した.

b) VS ジラーチ統一 [想定]

表 13.ジラーチの種族値

H A B C D S
100 100 100 100 100 100

ジラーチ統一には特別な敵対意識がある.第5世代で参加した種族統一大会において,決勝トーナメント一回戦でジラーチ統一が立ちはだかったのである.ロズレイドは晴れ「ウェザーボール」等で抵抗を試みたものの為す術なく蹂躙された.

しかし,時は流れ第7世代,新しい道具の追加やZ技の実装等により,絶望的だったジラーチ統一との対戦にも勝機を見い出せるようになった.ただし,件の惨敗以降でジラーチ統一と対戦したことはない(ジラーチ単体であればシャドースチール大会で複数回戦闘経験がある)ので,今後の種族統一戦で対峙した場合に備えて対処法を考察する.

ジラーチがロズレイドに対して使用してくる攻撃技のうち特に警戒すべきものは,タイプ一致のエスパー技「しねんのずつき」「サイコショック」「サイコキネシス」であろう.「しねんのずつき」は威力80の物理技であり,「サイコショック」と「サイコキネシス」はそれぞれ威力80と90の特殊技である.ただし,「サイコショック」は特防ではなく防御のステータスでダメージ計算されるため事実上物理技である.特に「しねんのずつき」と「サイコショック」は,ロズレイドの低い防御を狙って使用されることが多い.

これらに対しては,Z「まきびし」で防御を1ランク上昇させ,その後「ないしょばなし」で相手の特攻ランクを1ランク下げてひたすら耐久で粘る方法が有効であると考えられる.防御と特防1ランク上昇により,前述の3つの技のうちどれが使われても耐える算段である.なお,「サイコショック」は特殊技であっても「とつげきチョッキ」によるダメージ軽減はできないが,「ないしょばなし」を用いれば相手の特攻ステータス降下により「サイコショック」のダメージを軽減することができる.ただし,残念ながらジラーチは性別不明な種族であるため「ゆうわく」は失敗してしまう.

また,ジラーチは「ひかりのかべ」を習得可能であり,素早さのアドバンテージを利用して最初に「ひかりのかべ」を使う可能性は高い.タイプ相性で劣勢に回される種族相手に持久戦を挑むべきではないとは述べたものの,ロズレイドの特殊攻撃を抑えられ,タイプ相性的に後述の物理攻撃技も通用しない相手であれば,残る手段は籠城戦のみである.Z変化技による耐久の上昇等を駆使して耐え忍ぶしかない.

<総評>

「とつげきチョッキ」(特防ステータスを1.5倍にするので1ランク上昇に相当)を使えば最初から特攻ダメージを軽減可能だが,変化技を一切使えなくなるためやや柔軟性に欠ける.一方で,天候を利用して有利な場を構築したりZ変化技を主体として守備力を強化したりすれば他の変化技等を絡めて柔軟に戦える反面,守備の態勢を整えるのにターンを要するため敵に行動の余裕を与える.それぞれ長所と短所があり,戦い方の選択には対戦種族に応じた事前の熟考が必要である.

3.4 物理攻撃の奇襲

本項の内容は,(1)の項で挙げた「ひかりのかべ」を使われる場合や特防耐久が極度に高い種族を相手とする場合の対処法の1つであると言える.

サン・ムーン以前はロズレイドのタイプ一致物理攻撃技で最高威力のものといえば,草タイプの「タネばくだん」と毒タイプの「どくづき」であり,共に威力80であった(「しぜんのちから」を除く).しかし,ウルトラサン・ウルトラムーンでは新たに威力120の草タイプ物理技「パワーウィップ」を習得可能になった.物理型ロズレイドはこれらの物理攻撃技を主体的に使っていくことになる.

a) VS 高特防かつ低防御の種族 [想定]

物理技を補助する変化技として「つるぎのまい」が多く用いられるであろうが,それ以外にも有用な変化技が存在する.それが「とぎすます」である.「とぎすます」を組み合わせることで物理攻撃技単体での攻めとはまた違った突破口が開ける可能性がある.例えば,「とぎすます」をZ技として使えば,攻撃を1ランク上昇させるとともに次ターンで使う自分の技を必ず急所に当てられるようになるのだ.ロズレイドは元々物理攻撃が不得手な種族であり,物理攻撃技をそのまま用いたとしてもそれほど大きな効果は期待できないため,上記の変化技を併用する必要があるだろう.

本項では,「高特防・低防御」の種族を相手にした場合に,ロズレイドの物理攻撃技がどの程度通用するのかを確認した.ここ言う「高特防・低防御」の種族とは,防御種族値Bと特防種族値DについてB / Dが0.6以下の種族とした.0.6とは,ロズレイドの攻撃種族値Aと特攻種族値CがA / C = 0.56であることを考慮して設定した閾値である.さらに,下記の条件に基づいて物理ロズレイドが与え得るダメージ率を計算した.

表 14.「高特防・低耐久」種族に対する物理ロズレイド

4-09-1

<検討対象種族>

以下の1かつ,2または3に該当する種族

  1. D≧100(特防が高いと思われる目安)

  2. 素早さ種族値S≧80(ロズレイドのS-10以上)

  3. ロズレイドに対してタイプ相性有利

<ダメージ率計算条件>
  1. ロズレイドは攻撃努力値252+上昇補正

  2. 防御側はHPと防御努力値252+上昇補正

  3. ロズレイドは各種族に対して最大ダメージを与え得る技を使う

なお,検討対象種族の条件に完全に合致しないものの,(1)a)で述べたニンフィアも対象に加えている.6のロズレイドの使用技は「パワーウィップ」「どくづき」「ギガインパクト」のいずれかを考慮する.なお,「しぜんのめぐみ」はタイプを指定できるのは1回切りであるため今回は除外した.以上の条件下で,「攻撃ランク上昇なし」と「攻撃2ランク上昇」(「つるぎのまい」想定)と「攻撃1ランク上昇+急所」(Z「とぎすます」想定)それぞれの与ダメージ率は表 14の通りである.

Z「とぎすます」で攻撃ランクを1段階上昇させた上での急所狙いの方が,「つるぎのまい」で攻撃ランクを2段階上昇させた場合より与ダメージが多くなる.しかし,Z攻撃技を使う場合は「つるぎのまい」を使用したほうが高いダメージ率を期待できるので,戦況次第で切り替えていくことになるだろう.

なお,「パワーウィップ」や「どくづき」が半減されてしまう場合は「ギガインパクト」の使用を想定するが,威力150(Z技は200)と高いとはいえロズレイドではタイプ不一致であり,ほとんどの場合相手を倒しきることはできない.そうなれば,(3)耐久の上昇で述べたように持久戦に持ち込まざるを得なくなる.

b) VS ウツロイド統一 [実戦]

 勝敗:●

表 15.ウツロイドの種族値

H A B C D S
109 53 47 127 131 103

a)で対象とした「高特防・低防御」種族に含まれるウツロイド統一との対戦では,実際に物理型ロズレイドを選出して戦った.ウツロイドに対しては一応「めざめるパワー(地面)」で4倍弱点を突くことはできるものの,HP109,特防131と極めて高く一発で倒し切ることはかなり厳しいだろう.その一方で,ウツロイドの防御は43と特防より遥かに低い.そこで,最初から特攻で攻めるのではなく,物理攻撃を仕掛ける戦法を採った.

「ひかりのかべ」を使われることは想定できていたので,初手でZ「パワーウィップ」を放って一撃で倒せた.なかなかの奇襲になったに違いない.対戦としては敗北したものの,上手く立ち回らせることができれば勝利を掴める可能性もある.

2体目のウツロイドで「サイコショック」を連打されたので,前項の対「サイコショック」ジラーチ型を後続に置くと言った連携が有効かもしれない.

<総評>

今回は,あくまでも相手の防御ステータスが最も高い状況を想定したダメージ率の計算であったが,相手が防御を重視していないアタッカー等であればもう少し確定1発に収められる範囲が広がるだろう.現に対ウツロイド戦では相手の先発が物理耐久型でなかったため,能力上昇なしのZ「パワーウィップ」でも一発で倒すことができた.ロズレイドを目の前にして果たして相手は防御特化型を選出してくるのか,ということである.

しかし,対ウツロイド戦の例のように,最初の物理攻撃奇襲が上手くいってもその後立て直されたのでは意味がない.物理型で先制した後の立ち回りについては研究の余地が多分に残されている.

4.おわりに

本稿の考察はあくまでも相手の型の一例に対するものである.これまで示してきたもの以外にも策戦はいくつもあるが,際限がなくなってしまうので最低限押さえておきたい点に絞って記載した.種族統一戦では予想外の戦法をとられて一気に崩されて泣きを見る場面が多々あることを忘れてはならない.特に,双方が大ダメージを与え・被り得るようなタイプ相性が互角な種族統一パ同士の対戦では,上手く立ち回ることができれば一方的に勝てる可能性があるし,逆に一つ判断を誤れば一方的に負ける可能性もある.勝負は短期決戦が予想され,最初の一手如何ではその時点で勝負が決まってしまうこともあるだろう.本稿で述べた基軸4項目に加え,ロズレイドと向かい合った相手が何を想定して初手の動きを選ぶのか分析すれば,より戦略の幅が広がるかもしれない.

筆者がロズレイド統一で戦い始めてから約7年になるが,世に存在する種族統一パ全てと対峙した訳ではない.新たな種族統一パとの対戦を経れば経るほど,ロズレイド統一の運用の幅は拡大し育成型の種類は増えていくだろう.ただし,ロズレイドの能力そのものが今後の世代で大きく変わることはまずないと思われる.表向きはメガロズレイドの登場を熱望しているが,当のゲームフリーク社は新作等の事業展開に邁進しており過去を顧みる余裕はなさそうなので,半ば諦めている.しかし,例え今後ロズレイドを取り巻く環境の変化がなくとも,種族統一の文化が存在する限り,ロズレイド統一は止まらないからよ.